⑩ ダイソー針なしルアー

その週末、さっそくルアーを投げに、海釣りへ。
さんざん竿を振り回してきたおかげで、仕掛けをジェット天秤からルアーに替えても、うまいことキャストします。
いや、むしろルアーの方が、コンパクトで重さがあるため、投げやすそう。
キャストしては巻いて、巻いてはキャスト、としばらく調子よく遊んでいました。

が、なんか危ない。
ルアーは、餌釣りの仕掛けとは異なり、大きな針が付いている。
他の人に当たったら大変。
本人が触るときも、手に針が刺さりそうで怖い。
事故や怪我につながらないように、どうしても横で「それは危ない。これはダメ」などと口うるさく言ってしまいます。
しかも、根がかる。
油断すると、すぐに地球を釣って、ロストです。

すると、息子が発案しました。
「オレ、ハリいらない」

なぬ?針がないと魚は釣れませんよ。
「べつにいい。オレ、なげるのがたのしいから」

そこで我々は気付いたのです。
これまで、どうにかして息子に魚を釣らせようとしていました。
サビキでもなんでもいいから、とにかく魚を釣らせてあげようと必死になっていました。
しかし、息子がやりたかったのは、それではなかったのです。

なるほど。そうか。
息子にとっては、まだ「釣り」ではなく「釣り遊び」の段階です。
本物の魚が釣れなくてもいいのです。
マニュアル通りの親の言う通りにやるなんてつまらない。
「魚を釣りたい」という気持ちは、まださほどありません。
それよりも、海に向かってキャストする自分カッコイイ。
彼にとっては、それで十分なのです。

帰宅後、さっそく、ダイソーのメタルジグから針を外し、息子のルアーケースに収納。
この日から、この「ダイソー針なしルアー」が、息子の定番の仕掛けとなりました。